2022-11-10

もう1年半くらい通っている、会社の先輩から紹介してもらった美容師さんに髪を切ってもらう。店内に客が僕しかいないのもあって、けっこう踏み込んだプライベートなこともじゃんじゃん話してもらうのでドキドキする。誰に対してもこんなふうに話すのか、僕だからなんでも話してくれるのか。大切な先輩が大切にしている美容師さんということもあり、僕が話を聞くことですこしでも心労が軽減されたらいいなと思いつつ、べつにカウンセラーでもないのだし、考えすぎだろうとも思う。

オフィスでインフルエンザのワクチンを接種する。いい会社なので自己負担なしで接種してもらえる。あたりまえじゃないよほんとに、ありがたいよ。不活化されたインフルエンザのウイルスが左腕にいる。そのまま昼休みも兼ねて、お気に入りの立ち食いそばへ歩く。アスファルトに塗られた白線が消えかかっている。車や人の通りの多さが横断歩道の劣化として記録されている。世界の実感は、かすかな痕跡の集合だ。ウイルスは、誰かからやってきて、また誰かへ渡り歩く。そうやって通過されただけの、ネットワークのひとつになるような感覚。僕の身体に残された抗体は、果てしない新型コロナウイルスの旅を記録している。歩行者信号が変わるまでのすこしのあいだ、そんな世界を想像していた。