見知らぬ番号からの電話にでると、やたら自然すぎて逆に気味が悪い合成音声が一方的に話しかけてくる。なんかよくわからないけど神奈川県がLINEと連携してAIが電話してきてるらしい。SFか。「はい、か、いいえ、でお答えください。パルスオキシメーターはありますか?」「いいえ」「体温は37.5℃以上ですか?」「いいえ」「ありがとうございました」会話というよりはコマンドラインインターフェース。たしかに人間がかけてきたとしても同じような会話だろうし、これで保健所の業務が軽減されているならいいよね。
ずっと、命の数が「人数」で数えられることに違和感を感じていた。数千人や数万人のなかに、名前をもったひとりがいることを、「人数」は表現できていないと思っていた。いま、感染者のひとりとしてカウントされる立場になって、こんなふうにシステムによって自動で処理されてみると、もはや「人数」なんてそんなに意味がある数字ではないのだと、いまさらながらに気がついたりもした。
あらためてインターネットの知り合いの人たちがそれぞれの日記に書きつけている新型コロナ罹患体験を読み返してみても、二晩ほど高熱でうなされるぐらいで済んだ僕のケースはかなり軽症のようだった。平熱に戻ったあとはそのままで、すこし鼻水がでるくらい、あとはひきつづき喉が痛くて声がちょっとダンディになっている。でも、それも治りつつある。食欲もあるし、味覚もおかしいとは思わない。もう週明けから在宅で働ける。行楽日和の週末、外出できない退屈な時間を潰せるようなものは身の回りに無限にあるけれど、それらのどれもやる気が起きず、ひたすら眠ったり、恋人と何時間も電話をしていた。