野球ってつくづく不思議なスポーツだ。大雨で1時間ほど中断しているあいだ、テレビではびしょびしょのスタジアムの風景の中継映像を見ながら、実況と解説者が延々と雑談をして場をつないでいた。野球は、効率とか、生産性なんてことは考えない。実力と成果を前提にしつつ、最後は情が優先されるように見える。中日ドラゴンズを相手に3連勝した横浜DeNAベイスターズは、あしたから広島へ行かないといけないのに、夜10時を過ぎても野球をしている。野球選手には残業がない。田中健二朗という投手が7月に怪我をして、きょう一軍へ復帰した。投げる姿は、その一挙手一投足が、すべてかっこよかった。打たれても、仲間が捕ってくれる。グラウンドに離れて立つ選手のあいだに、信頼関係が見える。野球が好きなのか、野球選手が好きなのか、だんだんわからなくなってくる。野球は、ボールではなく想像のやりとり。物語を強制的に発生させる装置。手に汗を握ったり、喜んだりして、きわめて具体的な人間の身体能力を扱いながら、どこまでもファンタジー。スタジアムから帰るのは、ディズニーランドから帰るのにそういえば似ていた。