じゃあまたねバイバイ、と手を振りながら電車を降りて、それから帰り道をひとりで歩きながら、右手の感触を思い出していた。触れたいと思って、手を繋いでいい?と聞いたら、いいよと応えてくれたので、手を繋いだのだ。すこし強く握ると、握り返される力を感じた。手を伸ばせば触れられる距離に好きな人がいて、触れたいと思って、その気持ちを受け入れてもらえたことが、うれしかった。ずっと、そうしたかったから。仕事をする右手も、詩を書く右手も、バイバイと手を振る右手も、ぜんぶ僕の右手で、僕がずっとそうしたかった右手で、その気持ちを伝えて握り返してもらった右手だから。