2022-08-10

逗子駅から海岸沿いを走るバスへ乗り込むと、海水浴客だと思われる人たちでいっぱいだった。雲ひとつなく晴れた夏の空は、Photoshopで切り抜きやすそうな青色で。初めて行った神奈川県立近代美術館の葉山館と呼ばれる平屋の建物は、展示室からも、併設するレストランからも、休憩のベンチからも、いろんな場所から海が見える。

アレック・ソスの個展は4つの部屋で構成されていて、最後の部屋が1時間の映画の上映になっている。着いたらもう上映がはじまる時間だったので、展示された写真たちもそこそこに映画を観た。内容は、アレック・ソスの撮影現場に密着したドキュメンタリー。ふつうの乗用車で旅をして、なんらかの事情により社会から出て行かざるを得なかった人たちにどんどん出会い、じゃんじゃん話しかけて、ポートレートや暮らしている部屋の様子を大判カメラで写真へ収めていく。恣意的な編集にBGMもしっかりついていて、なんだかクレイジージャーニーくらいやりすぎな演出も感じつつ、旅の合間にアレック・ソスが話していた、偶然に身を委ねて「運ばれていく」のを大切にしたいという言葉に共感した。自分の意思でどこかへ行くのではなく、「運ばれていく」という感覚は、すごくよくわかる。展示も、おもしろかった。とくに海が見える部屋での展示は、プリントを壁にマグネットで留めるくらいの印象の軽さもあって、なんだかTumblrのダッシュボードを眺めているみたいだった。

併設されたレストランも景色がよく、ひとりで食べてるやつなんかいなくて、肩身が狭かった。しかし周辺に休憩できる店があるかどうかも知らないし、こっちもはるばる小旅行気分で来てるので、開き直って素朴な味のハンバーガーを頬張った。それでも、クーラーの効いた涼しい室内で、アイスコーヒーを飲みながら遠くに寄せては返す波をぼんやりと眺めているだけで、かなりよかった。

冬には内藤礼の展示もあるみたいなので、また行きたい。そのときには、窓から冬の海が見えると思うと楽しみだ。