子育ての大変さは、ひとりぼっちの僕にとっては数ステップ先の話で、まったく想像もつかない。もしかすると数ステップ先までたどりつかないまま、経験しないで終わるのかもしれない。それでも、姉や、会社の先輩のご家族とご一緒させてもらう機会があると、想像もつかなかった大変さの片鱗に触れることがあって、ありがたいなと思う。たった数時間の経験でわかったような気になるのもおこがましいが、子どもはひとりずつ多様な個性を持っていて、それはいわゆる一般化された子どもの印象とはかなり異なるし、マニュアルみたいに全員へ効果的な対応の方法が決まっているわけでもない。そんな当たり前のことすらも、触れなければ想像がつかなかった。想像できなければ、狭すぎる「知っていること」にあてはめて解釈して、たくさんのことを誤解してしまっていたのだろう。やさしさとは、つまり想像力で、想像するには、知る必要がある。もしかして経験しないかもしれないからこそ、同じ場所を共有する人たちのことを、もっと知りたいと思う。