ただ通勤してるだけなのに、じぶんの身体からこんなにも水分が出るんだというくらい汗をかく。そういえば毎日会社へ通っていたころ、夏の日は着ているTシャツとは別にもう1枚かばんに入れておいて、会社に着くなりトイレの個室で着替えるみたいなことをしていた。部屋で、ずっとひとりで過ごしていた2年間は、身体が見えなくなっていたのかもしれない。たかが通勤だとしても、こうやって移動したり、汗をかくことで、身体の存在がよみがえってくる。日が沈むすこし前の、生ぬるい渋谷を駅にむかって歩いていると、前世のように忘れていたコロナ禍の前の記憶が呼び起こされる。うまく思い出せないけど、たぶん楽しかったんだと思う。