東京都写真美術館で本城直季の展示を観たあと、恵比寿でじぶんのような者が入れるような飲食店がないかうろうろしていたところ、座って食べられる系の立ち食いそば(意味不明)を発見し、事なきを得た。こういう誰にも勧められるわけでもないが、個人的に信頼できる場所が増えるのはうれしい。街ごとにひとつは把握していると安心だ。それから山手線で浜松町へ移動して、駅からすこし歩いたところにある浜離宮恩賜庭園へ。いい天気が過ぎる。春というよりは日差しが強く、夏というよりは肌寒い、いいとこどりみたいな季節。暦としても体感としても、これから5月がはじまる予感に満ちている。この大きな公園には初めて訪れたのだけど、海に囲まれているからなのかロールプレイングゲームのマップを歩いているようでおもしろい。周囲の新橋や汐留のビル群と植物の対比もテーマパーク感を醸し出していて、どちらが自然なのか人工物なのかわからなくなるような。「お花畑」と書いてある標識の書いてある方向へ歩いていくと、草ひとつ生えていない広大な敷地に鳩が群がっていた。いつごろ咲いてるんだろうなあ。
F1.4に絞り値を開放して、ほかの値はカメラに任せて撮ってみた。そうすると、だいたいシャッタースピードが1/4000秒ぐらいまで速くなって、日差しが当たっている箇所は露出オーバーで白く飛ぶ。1975年に作られたらしいこのレンズは、ピントが当たっていないところが油彩画で描いたように輪郭がなくなり、風景へ溶け込んでいく。かたちが溶けていく。だから、露出オーバーかつピントが外れると、光が当たることでかたちが溶けていくように見える。カメラの背面の小さな液晶ディスプレイではそんなことわからないのだけど、部屋に帰ってきてパソコンのディスプレイで大きく引き延ばして見ると、けっこう心が動いた。演出されすぎというか、ノスタルジックすぎるようにも思えるけど、いつでも感傷的な気分にひたりやすい僕の、ものの見方に近いのかもしれない。写真を撮るのが楽しい。カメラ初めて持ったんかってくらい、じゃあこれはどう写るのかなと思って見たものすべてをパシャパシャしてしまう。こんなに楽しめるなら、我ながら楽しそうでよかったですねと思う…。
公園を出て、新橋へむかい、銀座まで歩いた。途中で中銀カプセルタワーの解体工事に出くわしたり、これが電通の本社か〜 みたいな、東京の街を歩くと芸能人に出くわすみたいな感じで有名スポットにたどりついておもしろい。そして、やはり街は駅の単位で分割されているのではなく地続きだということを実感する。小学生のころから電車に乗り続けてきたので、マインドセットが電車に支配されすぎていたのかもしれない。そんな「街は地続きで感動した」なんて、あえて言う必要のないくらい、当たり前のことなのかもしれないが。