電車を乗り継いで、東京駅へ行く。目的はない。東京駅になにかあるわけではなく、東京駅へ行くのが目的。地下街の適当なラーメン屋に入り、煮干しラーメンを食べる。油が多すぎる。好きな人は好きなのかもしれないが、あまり得意ではなかった。おいしいラーメンを食べたいから来ているのではなく、いつかの成功体験をもとに、自分のやるせない気持ちに対処する新たな手法を生み出すために食べているだけなので、おいしくなくても問題ない。煮干しラーメンがだめなら、次回は塩ラーメンを食べればいい。温かいそばでもいいし、カレーでも、とんかつでもいい。可能性を試しては潰していく。PDCAを回していく。そうやって再現性のある休日の過ごし方を開発していく。週末の2日間で自分を再生させる手法を確立するのだ。東京駅には、あらゆる路線の電車が止まる。そのなかから適当な電車に乗って、適当な駅で降りる。なるべく地図を見ず、知らない街をひたすら歩く。たまに出会った光景の写真を撮る。小さなカメラは肩が凝らなくていい。最近、財布を小さくした。電車もコンビニもApple Watchで決済できる。クレジットカードと何枚かの小銭、念のための三つ折りの千円札が数枚が収まった小さな財布が、ポケットに入ってる。スマートフォンからBluetoothで接続されたワイヤレスイヤホンへ、ラジオが流れている。このまま、どこまでも歩けそうな気がする。実際は2時間ほど歩いたら疲れてしまって、適当な駅から地下鉄に乗って、それでもう満足して帰ってしまうのだが。