鹿スタディーズ

越谷市科学技術体験センター ミラクル友の会 会員

YouTuber になりたい (3)

おもしろいとは、いったいどういうことなのだろう、と思いながら「ゆきりぬ」という YouTuber の女性がひとりで台湾を旅行する動画をみる。「ゆきりぬ」には「ピースの角度は 30 度」というキャッチフレーズのようなことばがあり、そのことばを動画の冒頭で発しながら決めポーズをするのがお約束になっている。そのことに、どのような意味があるのかはわからない。また、なぜ台湾へ行くのかも、ぜんぜんわからない。それでも、どうしてこの動画を再生しているのかというと、おもしろいからだ。

「ゆきりぬ」には照れがない。ひとりで飛行機の座席に座っていようと、食事はもちろん、宿泊先のベッドの上で、台湾の夜市の屋台の射的でさえも、片手で自分へカメラをむけて、こちらへ語りつづけながら鉄砲を撃つ。動画のほとんどのカットに顔が写り込んでいる。たとえ風景が白飛びしていようとも、露出もピントも顔に合っている。顔への異常な執着。そこには、好きなことで生きていくというよりも、 YouTuber として生きることを選んだ自覚や、覚悟さえも感じられる。

顔は、情報が多い。顔は、物語のログである。顔というオブジェクトのむこうがわに物語がみえて、わたしたちもおなじように顔というオブジェクトを持っている者として、顔をみると、その物語に参加することになる。おなじ物語を持たないばらばらなわたしたちにとって、顔は貴重な共通の話題なのだ。

おもしろいとは、情報が多いということなのかもしれない。それは、要素が多いということではなく、むしろ少ないことが結果的に情報を増やすこともあると、 YouTuber は教えてくれる。ぼくも YouTuber になりたい。